◎ なんと年間医療費が10万円も下がった!!

◎ PPP(公民連携)手法で「運動教室」

◎ 日本の課題解決、「健康」キーワードのまちづくり

◎ 新潟県見附市(人口4万人)

◎ 全国へ波及すれば健康関連産業で5万人雇用に

中高年向け「健康運動教室」導入で、参加者の年間医療費が実に10万円も下がったことを実証した自治体がある。新潟県見附市だ。産学官連携(PPP)による同市の展開は、従来の健康福祉事業だけにとどまらず、健康をキーワードとしたまちづくりにまで発展しつつある。また他自治体への広がりも見せる。同施策が仮に全国に展開できれば、年間医療費を約1兆円抑制、健康関連産業の創出により約5万人の雇用を生み出しうる、という試算もある。健康をテーマとしたPPPのまちづくりにスポットを当てる。

「日本一健康なまち」を目指す見附市(久住時男市長、人口4万人)は核となる事業「健康運動教室」を平成14年度から展開する。現在、市内人口の3%にあたる、1322人(平成22年3月末現在)もの継続参加者を抱える。「運動教室」の成果は、非参加者との年間医療費の差額で顕著に現れた。実に10万円以上ものコストを下げてしまったのだ(※1)。
 見附市は平成11年度から「いきいき健康づくり事業」を始めた。事業を進めながら徐々に充実化を図り、平成15年度には「いきいき健康づくり計画」としてまとめた。同年度から計画にある、「運動」、「生きがい」、「食生活(食育)」、「検診」を4本柱とした施策展開をしてきている。このなかでも「運動」は、「健康運動教室」という形で核的な事業として進めてきた。
 市健康福祉課の佐藤秀一主査は「平成13年頃、筑波大学の久野譜也・准教授の考え方に基づき、高齢者の寝たきり予防に効果が出ているというテレビ番組が放映され、たまたま視聴していた前市長が、久野氏へアプローチしたことがきっかけだった。ちょうど同先生がベンチャー企業(株)つくばウエルネスリサーチ(茨城県つくば市、略称:TWR※2)が設立されたこともあり、同先生のプロジェクトが見附市で始まった。平成14年に現市長体制になり本格化することになった」と振り返る。
 見附市の「運動教室」は、中高年者の寝たきり防止・生活習慣病予防を目的に、人口の5%、2000人の参加者を目標として始められた。教室への参加者は具体的に、「有酸素運動」と「筋力トレーニング」を行う。医師による運動可否判定、体力テストを経て、筑波大学とTWRが、個人の体に合った個別プログラムメニューを提供(「e-Wellnessシステム」という)、参加者は、週2回の施設プログラム(エアロバイク活用やデータ更新など)と、週3回の家庭用プログラム(ウォーキングや筋トレなど)を実践する。施設は、市内に2ヵ所ある拠点施設(「ネーブルみつけ」「武道館」)か、地域会場(8施設)を使用できる。対象・期間は、「中高年コース(概ね60歳以上の市民)・9ヵ月」「中年コース(概ね40歳以上の市民)・6ヵ月」「悠々コース(在宅中心・概ね40歳以上の市民)・6ヵ月」。参加費として期間中は1人月額2000円を徴収する。
佐藤主査は「見附市運動教室の特長はまず、筑波大学・TWRとの産学官連携にある。e-Wellnessシステムにより個別プログラムが示され、運動効果も個人に示されることが参加者を引きつけている。人口4万人の市内に、運動指導員がいる拠点施設が2ヵ所もあることも大きい。家庭でも可能なプログラムだが、やはり施設があると運動に対するモチべーションが上がったり、参加者の間でコミュニティが発生し、継続率があがる」と指摘する。
 佐藤主査は「一方、課題は、健康づくりに興味のない市民をどう巻き込むか(動機付け)、期間を終えた参加者にどう継続してもらうかだ」と述べる。
 見附市の「いきいき健康づくり」はほかに、「生きがい」(定年退職者の地域活動など)、「食生活」(地産地消の日本型食生活の普及啓発)、「検診」(新潟大学医学部と連携した小中学生を対象とした健診など)といった事業も同時に展開、4事業を関係付けながら市の健康づくりを進めている。
 同市は次の段階として、「Smart Wellness Cityプロジェクト」という、健康をキーワードとしたまちづくりに挑戦している。プロジェクトは、健康づくりという視点で市全体の事業を関連づけて展開するもの。市民の心身の健康だけではなく、例えば、道路整備のあり方や環境に優しいまちづくりを健康に関連という切り口で実施する。
平成21年11月には、同テーマに賛同した首長で構成する「Smart Wellness City首長研究会」という組織も立ち上げた。首長連合により3年を目処に新たな都市モデル「Smart Wellness City」の構築を目指す。現在、構成市町村が共同して、「健康づくりを核とした地域活性化」という総合特区のモデルイメージを検討している。そこでは「健康運動教室」が全国の5割に普及すれば、年間医療費を約1兆円抑制でき、5割の世帯が「健康づくり」に支出した場合、1兆円相当の健康関連産業を創出、約5万人の雇用を生み出しうると、試算している(※3)。
 健康をテーマにPPPを手段としたまちづくりの今後の展開に注目したい。

※ 1・年間医療費の差額=運動教室開始3年後に年間医療費の差が認められたと筑波大学のデータが示す。運動開始後3年目で非運動者の医療費が37万4347円だったのに対し運動者は27万113円で10万4234円のコストダウンが認められた。
※ 2・TWR=久野譜也社長、資本金9263万円、産学官連携功労者表彰科学技術担当大臣賞受賞など各種賞を受賞しているベンチャー企業。
※ 3・内閣府地域活性化統合本部資料参照
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokkasenryaku/image/20100430_jimukyokuhear_kinyuu_haihu_5.pdf