◎ 23年度予算案の目玉「地域公共交通確保維持改善事業」○
◎ 国交省305億円計上、事前算定方式など導入○
◎ 協議会機能の強化の流れ、地域ごとの創意工夫を!○

 国土交通省は23年度予算案(公共交通関係)の目玉事業として「地域公共交通確保維持改善事業」(新規)に305億円を予算化した。「交通基本法案」も通常国会に提出予定、地域の協議会が策定する計画に基づく生活交通維持確保の流れも打ち出している。地域公共交通の厳しい現状に対し国は「解決策は地域ごとに異なる」として地域の創意工夫を促している。

 23年度予算案では新規目玉として「地域公共交通確保維持改善事業」(生活交通サバイバル戦略)305億円を挙げる。陸・海・空すべてにおける地域生活交通の確保の取り組みを支援する。補助の前提として従来の「事後精算方式」を「事前算定方式」、「地域協議会での検討、都道府県知事指定」を「都道府県協議会・市町村協議会を経ての各計画位置付け」に、それぞれ変更する。このうち「事前算定方式」は費用削減・収入増加インセンティブを強化する目的で導入されるものであり、費用・収入の事後的増減は補助事業者に帰属するとしている。
 また、予算面での強化に加え、地域の創意工夫を活かしやすくするため、各種協議会の機能強化も検討中。バス事業の規制では具体的に、車両スペック、走行ルート、ダイヤ、運賃、など認可対象だったものを届出制に移行する予定。
 国土交通省自動車交通局旅客課地域交通政策企画官の谷口礼史氏は「バスや乗合タクシー等の地域公共交通を効果的・効率的に維持するためには、地域特性を踏まえた取り組みが重要。先進事例の単純なコピーは必ずしもうまくいかない。それぞれの地域で、自らの地域特性に応じたやり方を考えていただきたい。熱意のある地域に対し国は支援をしていくスタンスだ」と述べる。「交通基本法」案の通常国会提出も予定されており、関連施策の強化と相まって、地域の取り組みに注目が集まりそうだ。

 地域裁量が拡大する流れの中で、生活交通分野における地域の新たな試みについて谷口氏は、(大分県)大分市・国東市、(京都府)綾部市・京丹後市、(愛知県)豊田市などの事例を挙げる。
 大分県は大分市内で「休日ファミリー割引」と称し、土日祝日のみ、大人といっしょ、という条件で3人まで子ども運賃を無料にする社会実験を実施。その結果、こどもの乗車機会が1.7倍に増え、収支もプラスだったため、本格導入された。同方式は沖縄本島(日祝日のみ)にも本格導入された他、熊本県でも社会実験が行われるなど、拡大しつつある。国東市は、補助路線の日中のお客が少ない便を間引き、その車両で公共交通空白地域を週に1日~2日ずつ日替わりで運行する「国東方式」を考案し、公共交通空白地域の解消と補助金額の削減の両立に成功した。綾部市は、路線バスからコミュニティバスへの転換に際し、普通運賃や通学定期の上限額を引き下げた結果、遠距離の利用者が増えた結果、バス会社時代よりも増収となった。京丹後市は、運賃上限を200円に下げた結果、系統によっては利用者数が1.7倍と大幅に増加した。豊田市では自動車教習所への送迎バスに一般客も無料で混乗できる。
 このほかのアイデアとして谷口氏はモビリティ・マネジメント(MM)に注目すべきとする。MMとは、心理学の手法を活用した誘導的アンケートなどを通じてマイカー利用からバス利用への行動変容を促す手法であり、近年、全国的に取り組みが進んでいるという。
また、谷口氏は「ICカード導入は事業者だけの検討では難しい面がある。複数事業者の相互利用、乗り継ぎ割引、地域商業との連携など調整すべき点が多い。ここに行政の出番がある」と説明する。
 谷口氏は「バス事業と行政の関係について欧米などと比較すると、日本は良くも悪くも民間任せで、行政の財政支援が少ない。平成20年度実績では、全国で約3万8000のバス系統があるが、7割以上が赤字。赤字系統の赤字と黒字系統の黒字を相殺すると約1600億円の赤字が残るが、このうち行政(国・都道府県・市町村)は約600億円しか補助していない。バス事業者は高速バス、貸切バス等の他の収益事業の利益や人件費カットでしのいできたが、それも限界となっており、毎年平均約2000㎞もの路線が完全に廃止されるとともに、全国的に経営破たんも相次いでいる。国は、地域自身も支援を行う場合にのみ国も協調して支援するという基本姿勢であり、自治体の主体的な取り組みが期待されるが、多くの自治体では公共交通関係の業務の専従者がおらず、専門家も不足しているのが実情。今は、自治体がやろうと思えばいろいろなことができるので、是非態勢を整え、地域にあった最適解を見つける努力をして頂きたい」と呼び掛けた。
 具体的な取り組み方について谷口氏は「例えばスクールバスに一般客を混乗させる、スクールバスの空き時間に車両をコミュニティーバスとして間合い利用する、コミュニティバスを毎日運行するだけの財源がなくても、週に1~2日ずつ各地区を日替わりで走らせる、など様々な工夫ができる」と示す。

※ 地域公共交通におけるバスの現状=全国で約3万8000系統あるうち74%が赤字。約9000億円になる乗合バス市場だが、事業者の75%が赤字。赤字額を合計すると約2700億円にもなる。これに対し国・都道府県・市町村が補助している額は約600億円(20年度)。内訳は、国庫80億円、都道府県142億円、市区町村393億円。バス事業者の体力は落ちる一方。過去、不動産事業などで赤字分を相殺していたが、その余力もなくなっている。結果、人件費を削る流れに。人件費は、過去全産業平均より高かったが、民営バスでは年収458万円と全産業平均を下回る。公営バスでも699万円、地方に行けば、年収290万円台で週休1日というところもある。賃金の低下により、人手がなかなか確保できないケースも増加している。
乗合バス市場のほかに、貸し切りバス市場として5000億円~6000億円がある。ツアーバスの増加などを背景に、20年度の輸送人員は371万人。
一方、自治体が事業主体となるコミュニティバスも増えている。緑ナンバーによる運行は、1099市町村で、2207ブランドが存在する(21年4月1日現在)、白ナンバーによる市町村運営有償運送は、427自治体で2305両が運行している(22年9月現在)。デマンドバスも増えている。近年、デマンド運行が注目されており、東大が開発したASPシステムのように従来より低コストの手法も登場している。他方、谷口氏は「デマンドは必ずしも万能ではなく、ケースによっては不便で高コストになる場合もある」と最近の安易なデマンド万能論に警鐘を鳴らす。

※ バスに対する法制度=1番のバックボーンとなる法律は「道路運送法」。国は地方(自治体)重視の姿勢を強めてきており、自治体が主催する各種の協議会での協議結果に対し、様々な法的効果が与えられるようになってきている。主な協議会として、「地域協議会」(路線廃止の申出への対応を検討。主宰者=都道府県)、「地域公共交通会議」(協議結果に応じ、コミュニティバスの運賃等の規制が緩和される。主宰者=一若しくは複数の市町村又は都道府県)、「運営協議会」(白ナンバー車による自家用有償旅客運送の必要性等を検討。主宰者=市町村または都道府県その他公共団体)、地域公共交通活性化・再生法に基づく「法定協議会」(地域交通計画を検討。主宰者=市町村)などに分かれる。各種協議会の再編・強化も検討されている。