被災地の水産加工各社、人手不足に打開策 託児所や宿舎

 東日本大震災の被災地の水産加工各社が従業員の仕事環境を整え、業務の効率改善に力を注いでいる。被災した漁港やその周辺のインフラが復旧してきたのに伴い、人手不足が深刻になっているからだ。トヨタ自動車の生産方式「カイゼン」を応用して工程を見直す例もある。工場稼働率を高め、売り上げの早期回復を急ぐ。

 めんたいこ製造の湊水産(宮城県石巻市)は3月下旬、社内に託児所を開設する。子育て中の女性の雇用を増やすのが狙いだ。子供を預ける先が見つからずに働きたくても働けない人は多いとみている。岩本淳・営業部長は「従業員の平均年齢は58歳。技術を継いでくれる若い人に来てほしい」と言葉に力を込める。

 カキやサバの加工を手がける本田水産(同)は2015年末に外国人技能実習生向けの宿舎を整備した。建設費約2800万円のうち1500万円は県や市の補助金を活用した。宿舎では現在、ミャンマーからの技能実習生6人が共同で生活する。本田太社長は「実習生同士がだんらんできる休憩室など、自分で設計案を作った。宿舎のおかげでチームワークが保てる」と喜ぶ。

 アワビやイクラの加工品「三陸海宝漬」が主力の中村家(岩手県釜石市)は、従業員の定年を60歳から65歳に延長した。ベテラン従業員に長く働いてもらうとともに、加工技術の伝承を目指す。佐藤朗・統括部長は「釜石の人口は減る一方。人手不足は20年の東京五輪後も続く」と話す。

 製造工程を効率化し、生産能力を引き上げる動きも出ている。

 フカヒレ加工の石渡商店(宮城県気仙沼市)は、トヨタ生産方式「カイゼン」を取り入れる。月内にもトヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)の専門チームを招き、製造ラインの見直しに着手する。石渡久師専務は「いま5人でやっている作業を3人にできれば、2人は別の仕事に回せる」とカイゼン効果に期待する。

 宮城県の1月の有効求人倍率(原数値、常用)は1.31倍だった。このうち「水産物加工工」は3.6倍で、全国(3.32倍)を上回る。水産加工業者が集中する沿岸部は住宅再建が遅れ、人口流出が顕著なためだ。水産加工団地の整備が進む気仙沼地区では、1月の有効求人倍率(同)が6.6倍に達した。

(日本経済新聞 2016年03月05日)