愛媛県・産学、植物由来の新素材で産業育成 3年かけ試作品

  愛媛県は愛媛大学や地元企業と連携して、植物に含まれるセルロース由来の新素材を生かした地域産業育成に乗り出す。県が夏をメドに基本方針をまとめ、2018年度末までに実用化にメドをつける。新素材は炭素繊維に代わると期待されている。製紙業が盛んで同大学に研究者がいる強みを生かし、中小企業の競争力を高める。

 セルロースは植物の細胞壁の主成分で、紙やセロハンの原料になる。新素材のセルロースナノファイバー(CNF)はセルロース繊維を髪の毛の2万分の1程度にまでほぐしたもの。密度は鉄の5分の1で、強度は鉄の約5倍。炭素繊維に近い強度と軽さを併せ持ち、自動車や航空機部品への応用が期待される。化粧品や食品など安全性が必要な商品にも使える。

 県は愛媛県産業技術研究所や学識経験者らによる検討会を設け、どのような用途に生かすかを定めた基本方針をまとめる。18年度末までに試作品を作り上げ、実用化に向けた道筋をつける。県によると、CNFの普及セミナーや関心を持つ企業のマッチングを手がける自治体はあるが、試作品の開発は愛媛県が初めて。

 試作品開発では紙、食品、繊維の3分野を柱に据える。紙では酸素を通しにくい性質を利用した包装材料やフィルター材料を開発する。食品では果汁が沈殿しにくい飲料、繊維では風合いを改良したタオルの開発を目指す。CNFと樹脂を混ぜ合わせることによる機械部品の補強や軽量化にも取り組む。

 県がCNFに積極的に取り組むのは県内の四国中央市で紙産業が盛んで、研究・供給体制が整っているためだ。同市に県の紙産業技術センターがあり、独自の研究を10年から続けている。CNFの量産技術を持つ大王製紙が同市に本社を構えており、試作品開発に必要なCNFの供給を受けやすい。愛媛大学もCNFの研究で強みがあり、提携していく。

 県は「CNFは食物にも使えたり、肌につけられたり、用途が多岐にわたる。それが炭素繊維と違う点」(産業創出課)とみる。早い段階でCNFの活用に取り組み、試作品を開発することで、多くの分野で差異化できる商品をつくる考えだ。

(日本経済新聞 2016年02月26日)